┃非定型業務の営業活動を支援できる?
1980年代にマイクロソフトとインテルがもたらしたIT革命は、オフィスの仕事を効率化していった。OA=Office Automationとは「オフィス仕事の自動化」だが、営業活動だけはこの波に取り残されていたのだ。
たしかに「営業活動の支援」と言うのは簡単だが、さまざまなお客様にいろいろな商品・サービスを売る営業活動をひとくくりに「支援」するなど、本当にできるのだろうか?
┃営業活動の「標準化」とは?
営業活動とは、営業マンが個別にお客様を訪問し、商品・サービスの紹介に始まり、提案、見積り、交渉などを行う仕事。これら人間の活動をITシステムが支援できるとは、なかなか考えにくいことである。
しかしながら、大勢の営業マンたちを観察していると、ある特徴が見えてくる。たとえば架空の会社XYZカンパニーでは、優秀な営業マンA君が、常に他の人より多くの売上を上げていた。A君は、たとえ担当地域や担当顧客が変わっても、やはり他の人より多くの売上を上げていく。
同社はこう考えた。
「多くの売上をあげるA君は、他の人より効率よく且つ効果的な営業活動をしているに違いない。そのノウハウを他の営業マンにも広めたら、会社全体の売上をもっと伸ばせるのではないか?」
こうして、1990年代の前半、XYZカンパニーで優秀な営業マンA君の活動分析が始まった。
A君は、
①製品紹介
②製品デモ
③提案
④見積り
⑤価格交渉
をしていた。
特に②製品デモでは、プレゼンテーション資料がわかりやすく、製品をお客様に試用させる時間を設けて大きな成果を上げていた。同社は、A君の製品デモシナリオを標準化して営業全員におこなわせたところ、売上が1.5倍に伸びた。
また、毎日の営業活動の日報をやめて、
1)どのお客様にどの活動(例:③提案)をしたか
2)結果はどうだったか
3)次にどの活動(上記①~⑤)をするか
を簡単に入力するためのシステムを構築して、営業マネージャーが個別の営業をマネジメントしやすくしたのだ。これは架空の例だが、多くのSFAはこのような使い方から始まった。
┃SFAの導入メリット
紙の日報をやめてSFAを導入することにより、こんな効果が上がることが知られている。
┃営業マネージャーがマネジメントしやすくなる
営業活動の流れがシステムに載っているので、個別の営業マンごとに、いつ、どんな活動をしていて、何に困っているかが、すぐに把握可能。つまり営業マネージャーはマネジメントがしやすくなる。すべてのメンバーの行動をリアルタイムに近い状態で把握することが可能となり、個々の案件に適切なアドバイスや指示を出すことができるだろう。トラブルやミスの把握漏れも防ぎ、目標達成をより確実なものとできる。
┃新人が即戦力になる
新人の営業担当者でも、熟練のA君が苦労して作り上げた営業活動をすぐに実施でき、即戦力の育成がしやすくなる。新人社員は右も左もわからず不安で動けないものである。しかいし、先輩の実績や方向性を示すことで、自発的に動き、どんどん挑戦できるようになるだろう。
┃顧客の情報が蓄積しやすい
営業活動の内容がシステムに蓄積し、将来にわたって有効に使える顧客データベースが作れる。これにより顧客のニーズをより正確かつ詳細に分析することができる。経営に取り入れれば、顧客の要求に合わせた戦略的な営業活動ができるだろう。
┃営業プロセスの無駄が省ける
SFAを使い始めた企業から「この活動が無駄だった」と気づくケースがよく報告されている。行動パターンを可視化することで、営業担当者1人1人の強み・弱みまでが分かってくる。無駄なく効率的な営業活動が行えるようになる点にプラスして、営業スキルの底上げにもつながるだろう。
┃営業戦略が立てやすくなる
個別の営業活動の進捗や受注確度がわかるため、四半期・半期ごとの営業目標達成のための方針や活動が考えやすくなる。目先の売上やデータに反応して対症療法的に戦術を変えていくだけではなく、時系列の逆算から営業戦略を策定することが可能になってくる。
セールスフォースなどに代表されるSFAとは、標準化・最適化された営業プロセスを、営業マン全員で実施することにより、会社全体の売上を伸ばすためのソリューションである。また仕事の過程で顧客情報や営業活動に関する情報がITシステムに残るため、さまざまなマネジメントがしやすくなるメリットがある。
┃SFAツールを選ぶポイントは?
SFAは現在、さまざまな製品が存在している。その中から自社に合う製品を選ぶには何を重要視するのが良いのか。
┃必要な機能が備わり、目的に合ったツールであるか
SFAの導入時に陥りやすい失敗例として、より多くの機能を使用したいと多機能を実装したSFAを導入し、実際の現場ではその機能を持て余してしまうことがある。得られる情報が多すぎることは営業効率を下げる恐れがある。欲しい情報がすぐにわかるようになっているか、自社での希望に合ったデータ分析やレポート出力ができる事が最も重要である。不必要な機能を盛り込まず、なるべくシンプルにまとめる判断が必要だ。
┃操作性に優れているか
営業担当者の使命は、売上を上げること。だからこそ、入力・報告などの事務作業はできるだけ効率良く終わらせて、顧客へ電話をかけたり、営業を回ったりする時間を少しでも多く確保したいところである。操作方法がわかりにくく、使い勝手のよくないSFAを導入してしまうと、「入力が多く、手間がかかる」と負担に感じられてしまうだろう。そうなるとデータ入力が浸透せず、せっかく営業支援のためにと導入したSFAも活用されないという事態が生じてしまう。どれだけ機能が充実しているSFAを導入したとしても、現場で使われなければ意味がない。その意味でも、導入前にトライアルを利用し、実際に使用する営業担当者の意見を聞き、それにあわせたSFAを選択することが重要になる。
┃導入支援・サポートが充実しているか
新しいシステムの導入には不安がつきものだ。そんな時に、機能説明や初期設定のアドバイスから社内での研修、情報の利用の仕方などを適切にアドバイスしてくれるサポート体制が揃ったサービスもある。システムを活用していくためにはこのようなベンダーのサポートがあるととても心強い。また、導入実績が多ければ、その分ベンダーにシステムについてのデータが蓄積されており、SFAを導入した企業で生じる個別の悩みや課題にも柔軟に素早く対応してもられることが期待できる。
┃まとめ
SFAは営業部門の業務を効率化することができる素晴らしいツールだ。この利便性を社内でしっかりと共有して、業務に携わる誰もがが納得して使用でき、営業活動の生産性を向上させることができるような導入を実現させよう。
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