ERPとは、"Enterprise Resource Planning"の略語であり、「経営資源の一元管理」を意味します。 具体的には人事や会計、生産等の業務に必要不可欠な機能を、網羅的に実装したITシステムのことです。 ERPをクラウド環境で使えるようにしたものを「クラウドERP」と呼びます。
クラウド環境でERPが扱えるようになったことで、自社内でサーバーなどのインフラ整備が不要だったり、業務効率化ができるようになりました。 実際に多くの企業でクラウドERPサービスが導入されており、業務の効率化や情報の一元管理などが行われています。
本記事ではクラウドERPの特徴やそのメリットと注意点、具体的な選び方について最新の情報とともに分かりやすく解説します。
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目次 ●そもそもERPとは? ●失敗しないクラウドERPの選び方は? ●クラウドERPを導入する4つのメリット ●クラウドERPを導入する4つの注意点 ●クラウドERP導入までの4ステップ ●まとめ ———————————————————————————
≪そもそもERPとは?≫ ERPとは、「経営資源の一元管理」のことです。
具体的には、 ・財務会計システム ・人事給与システム ・販売管理システム ・購買管理システム ・在庫管理システム ・生産管理システム といった根幹部分の業務を統合し、情報を一元化することで効率化を図るためのシステムです。 ERPシステムやERPパッケージなどと呼ばれたりもすることもあります。
ERP導入の主な4つのメリット ——————————————————————————— ERP導入に関するメリットは、主に4つあります。
◆ERP導入のメリット 1. データベースを統合することで、情報を一元化できる 2. 迅速な経営に関する意思決定ができる 3. 経営資源の状況を可視化することができる 4. 業務効率の向上が図れる
中でも、データベースを統合することで情報を一元化し、業務効率の向上、迅速な経営に対する意思決定を図ることができるのが大きな魅力です。 とはいえ、ERPの導入には初期費用がかかるほか、運用保守の人員確保等も必要になるという点もあります。
オンプレミスERPからクラウドERPへの移行が加速 ——————————————————————————— これまでは多くの企業で「オンプレミス型」のERPが主流として活用されてきました。 オンプレミスERPとは、ユーザーが自社内にソフトウェアやサーバーの設置をおこない、ユーザー自身で運用するERPシステムのことです。
これに対し「クラウドERP」とは、ERP機能をクラウド環境で使えるシステムのことです。
オンプレミス型と比較して、クラウド型は外部企業のサーバーを利用してシステム管理するため、一から自社にサーバーの設置を行う必要がありません。 利用するサービスによっては、システムの運用自体も代行してくれるところもあります。 データの保守管理等も行ってくれるため、自社でリソースを割くことはありません。
通信インフラの進歩によってクラウドERPが登場して以降、多くの企業でオンプレミス型からクラウド型への乗り換えが加速しています。 矢野経済研究所(株)の調べによると、2021年には全体の約6割以上がクラウドERPを利用しているようになるだろう、と予測されています。
出典:矢野経済研究所(株)
なぜオンプレミスERPからクラウドERPに置き換えが進んでいるのでしょうか?
クラウドERPは、これまで主に活用されてきたオンプレミスERPと比較して、導入コストが低く、保守管理の人員も最小限で良いというのが最大の理由です。さらに、環境変動にも柔軟に対応することができる点も魅力の一つです。
低価格で内部統制を強化できるという特徴は、特に中小企業にとって受け入れやすく、クラウドERPが大きく普及する理由の一つになっています。
≪失敗しないクラウドERPの選び方は?≫ クラウドERPはすでに多くのサービスがあり、実際に導入する際にはどこのサービスにするか迷ってしまうものです。
選ぶときはポイントを定めておき、そのあと目的に適したサービスを選ぶことが大切です。
ポイント1.既存業務との適合性を検証する ——————————————————————————— クラウドERPを選ぶ際には、既存の業務内容との適合性を最初に検証すべきです。
どれだけ評判が良くシステム性能が高いソリューションを導入しても、現場の環境と合わなければ意味がないからです。
そのため、クラウドERPを選ぶ際には、必ず既存の業務環境を整理し、正しく把握することが大切です。 システムの変更に伴う負担を小さく抑え、迅速な業務改善を行うためにも、現在環境との親和性が高いクラウドERPを選ぶようにしましょう。
ポイント2.クラウドERPのカスタマイズ性をチェックする ——————————————————————————— クラウドERPを選ぶ際には、システムのカスタマイズ性も重要になってきます。
企業によっては現在使っているオンプレミスERPからのシフトチェンジが難しく、一般的なクラウドERPの機能では、対応仕切れない場合もあります。
そのため、どの程度まで拡張性があるのかは、導入前からしっかりと調べる必要がある他、逆に拡張性が低いと業務の妨げになりかねないので注意が必要です。
ポイント3. セキュリティ機能が優れているか確認する ——————————————————————————— クラウドERPの導入で一番注意して欲しいのが、セキュリティ機能の項目です。 ネット犯罪は相変わらず企業にとって脅威であり、サイバー攻撃による情報漏洩の事件もよく耳にします。
クラウドERPは情報を一元管理する仕組みになっているため、万が一外部からサイバー攻撃を受けた際には、あらゆる情報にアクセスされてしまいます。
その上、内部不正による情報の漏洩等も考慮しなければいけないため、クラウドERPを導入する際にはより高度なセキュリティ機能が必要です。
≪クラウドERPを導入する4つのメリット≫ クラウドERPを導入する主なメリットとしては、大きく4つ挙げられます。
◆クラウドERPのメリット 1. ITコストと導入期間の削減 2. セキュリティ性の向上 3. グローバルに対応した機能 4. リアルタイムな情報把握
中でも、メリットとして最初に挙げられるのは、ITコストと導入期間の削減です。
導入コストに関してはクラウド環境ということもあり、利用するクラウドプラットフォームさえ決まれば、後はそれほど時間はかかりません。 その上、既に導入している企業も多数あるため、参考にできる事例が大変多いのもメリットの一つです。
メリット1.ITコストと導入期間の削減 ——————————————————————————— クラウドERPは、自社内で最初からインフラを用意する必要がないため、導入にかかる初期費用や期間が大幅に削減できます。 利用するサービスによっては、必要な費用は月額料金のみというところもあるため、初期費用なしで導入できるケースも非常に多いです。 導入に関してはまとまった資金がなくても行えるため、特に資金が厳しいスタートアップ企業にとっては大きなメリットなのではないでしょうか?
メリット2.セキュリティ性の向上 ——————————————————————————— 基本的にクラウドERPでは、システムの運用の殆どをベンダーに任せることになります。 そのため、企業によってはセキュリティ面の心配が出てくることもあります。
しかし、見方によっては社外のデータセンターに機密情報を保管することにより、万が一、自然災害や事故、不祥事等が行った際の対策になります。
また、ベンダー側も最新のセキュリティ対策を採用している上に、安全性で問題があると信用を落としかねないので、かなりシビアに扱っています。
メリット3.グローバルに対応した機能 ——————————————————————————— クラウドERPは、全てクラウド上で管理・運用されるため、他の子会社からもアクセスが可能であり情報共有の手段としては非常に優れています。
企業によっては海外支店などもあるが、クラウド環境であればどこからでもアクセスができるため、迅速に業務を進めることができるでしょう。
生産性の向上はもとより、多言語対応や各国の会計基準対応なども、クラウドERPの導入だけでまとめて対策を行うことができるのも大きいポイントです。
メリット4.リアルタイムな情報把握 ——————————————————————————— クラウドERPは、クラウド上で情報がシェアされるため、リアルなデータをいつでもどこでも確認することができます。
リモートワークや在宅ワーク等が主流となってきていますが、どこにいてもインターネット環境があればリアルタイムで情報を把握することが可能です。
また、クラウドERPを導入することにより、迅速な経営判断ができるほか、人的ミスや入力の二度手間なども省くことができるでしょう。
≪クラウドERPを導入する4つの注意点≫ クラウドERPには、注意すべき点も存在します。
◆クラウドERPで注意すべき点 1. 問題が発生すると全てベンダー任せになる 2. ネット環境がないと使えない 3. カスタマイズが難しい 4. データ管理に注意が必要
サービスの内容自体は、良くも悪くもベンダー次第なのでどこのベンダーを利用するかは、とても重要なポイントです。 万が一、問題が発生した場合は迅速に対応してくれるのかどうか、データ管理はどうなっているのかなど、契約前に詳しく調べるべきです。
注意1.問題が発生すると全てベンダー任せになる ——————————————————————————— クラウドERPを導入する際に、一番問題になってくるのが、どこのベンダーを利用するかです。
システムの運営自体は、ほぼ全てベンダーが行うといっても過言ではないため、しっかりと信頼できるベンダーを選定しなければなりません。
特に日本は地震大国と呼ばれるように、毎年地震が多く、停電も当然ながら起こりえます。 地震で停電しシステムが使えなくなった場合でも、その後、通常通り稼働するのかなどしっかりと考慮しておく必要があるでしょう。
注意2.ネット環境がないと使えない ——————————————————————————— クラウドERPは全てクラウド上でデータ管理されているため、万が一、インターネット環境が使えなくなると、システムそのものが使えなくなってしまいます。
企業の業務形態によっては、クラウドERPよりもオンプレミスERPの方が、適している場合もあります。 そのため、どちらが自社に適しているかは、しっかりと社内検討してから決めるべきです。
注意3.カスタマイズが難しい ——————————————————————————— クラウドERPは、ある程度サービス内容がテンプレート化しているため、オンプレミスERPと比較するとカスタマイズ性が劣ります。
しかし、近年はクラウドERPの利便性を上げるために、拡張性も改善されきていると言っても過言ではありません。
「カスタマイズ性」という観点もベンダー選びの際には、重要になってきます。
注意4.データ管理に注意が必要 ——————————————————————————— 自社内でインフラを整えて管理・運用するオンプレミスERPとは違い、クラウドERPは社外のサーバーを活用してデータを管理します。
そのため、データ管理に関しては、一段と注意を払わなければならないでしょう。 万が一、利用しているベンダーがハッキングや不正アクセス等が行われた場合、自社の情報が外部流失してしまう可能性があります。
情報の保守管理に関しては、ベンダーのセキュリティレベルに依存してしまうため、実際にサービスを導入する際には慎重に行うのが賢明でしょう。
≪クラウドERP導入までの4ステップ≫ クラウドERPを初めて導入する際には、具体的にどのような手順で行うのか分からない人が多いでしょう。
導入する際には必ず最初に、システム導入に際しての目的や、目標を定義することが大切です。 ゴールが設定できていないと、何のためにクラウドERPを導入するのか、途中で分からなくなってしまいかねません。
ステップ1.システムで解決したい課題を洗い出す ——————————————————————————— まずはじめにクラウドERPのシステムで解決したい課題を、社内でしっかりと議論し洗い出すようにしましょう。
業務効率化を考えるのであれば、最初の課題の洗い出しのステップは非常に重要になってくる上に、目的や目標の設定にも影響します。
ステップ2.全社最適な業務設計を立てる ——————————————————————————— クラウドERPを同じように導入している事例は数多く存在するため、業務設計を立てる際には、他社の事例を参考にするのも良い方法です。
また、クラウドERPには実際にどのようなパッケージがあるのかを調査し、自社の業種や業態、規模等に適しているかも吟味しておきましょう。
業務設計の段階でしっかりと調査することは、実際に導入段階でのトラブルの未然回避にも繋がるため、手を抜かないでしっかりと取り組むのがおすすめです。
ステップ3.課題解決に適した製品の選択 ——————————————————————————— 自社の課題が明確になり、業務設計まで行えたのであれば、実際に目的や目標に適したクラウドERPサービスの選択を行います。
すでに多くのクラウドERPサービスがリリースされており、製品選びは慎重に行うべきステップだといえます。
また、可能であればトライアル版を試してみて、実際に運用してみるのも一つの方法です。
ステップ4.クラウドERPの導入 ——————————————————————————— クラウドERPの導入後に問題が生じた場合は、しっかりとPDCAを回しながら業務改善する必要があります。
新しいシステムの導入には、何かしらのトラブルや不備が起こる可能性が高いため、フィードバックを得ながら改善していきましょう。
≪まとめ≫ クラウドERPとは、ERP機能をクラウド環境で使えるシステムであると解説しました。
多くの企業ではすでに導入されており、その利便性は証明されていると言っても過言ではありません。
クラウドERPを導入することにより、業務効率化や情報の一元化、機能最適化などが行えるため、まだ導入されていない企業は十分検討する余地があるのではないでしょうか?
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