DX(デジタルトランスフォーメーション)への取組は企業の生き残りを左右する! 国内企業の取組状況を解説

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最終更新日:2022/02/07

既に多くの企業が新たな業務展開や生産性の向上、競争力強化のためにDXの本格的な展開に足を踏み出しています。 この記事では、何故今DXが重要視されているのかを踏まえた上で、国内企業の取組状況や抱える課題について見ていきましょう。

 

 

 


DX(デジタルトランスフォーメーション)の概要 

DXとは、経済産業省によって以下の通りに定義されています。


「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
引用:デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(経済産業省)


DXとは、そもそもはスウェーデンのウメオ大学の教授エリック・ストルターマンによって2004年に提唱された概念でした。 ストルターマンによると、DXは「ITの浸透で、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」(引用:Information Technology and The Good Life)と定義されています。 DXの定義はどちらもやや広義的で、分かりにくいと感じる人も多いかもしれません。
DXの分かりやすい例として、書籍のデジタル化が挙げられます。 これまで書籍は書店で購入し、紙ベースで読むものでしたが、書籍がデータ化されたことによって、スマホやタブレットで電子書籍として読むことが一般化されました。 さらに電子書籍の購入履歴に基づいておすすめの書籍がレコメンドされたり、月額制のサブスクリプションで書籍が読み放題となったりと、私たちの消費行動は一変しています。
つまりDXとは、「新しいIT技術の導入により、企業の事業そのものを根本から変化させること」だといえるでしょう。

 

 

 

 

なぜ今DXが注目されているのか

私たちの生活は、これまでもIT技術によって大きく変化してきました。インターネットの進化や携帯電話の普及、AI技術の発展など、IT技術によって着実に社会が進化を遂げてきた中で、改めてDXに注目が集まっているのにはどのような背景があるのでしょうか。

 


①2018年の経済産業省による「DXレポート」

経済産業省は、2018年5月に「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」を設置しました。この会の中で、日本企業でDXを進めていくにあたっての現状の課題や対策が話し合われ、「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」が報告書として公表されました。(公表日:2018年9月7日) このDXレポートは「DXを進めていく上で必要となるアプローチやアクションについて、国内全体で認識を共有する必要がある」との目的のもと作成されたものであり、日本国内でDXを推進していく上での道筋を示したものです。 またDXレポート内でガイドラインの必要性が指摘されたことを受けて、2018年12月に経済産業省にて「DX推進ガイドライン」が策定される運びとなりました。

 

 

②「2025年の崖」問題によるリスク回避のため

2018年に公表されたDXレポートの中で大きな衝撃をもたらしたのが「2025年の崖」問題です。 「2025年の崖」とは、複雑化・ブラックボックス化した既存システムに依存し、DXを実現できない企業は、2025年から2030年の間に毎年最大12兆円(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性があるということを指摘したものです。ここで具体的に2025年というタイミングを挙げているのには理由があります。 DXレポートでは2025年に発生する問題として、以下の4つを挙げています。


・IT人材不足が約43万人までに増加(2015年時点では約17万人)

・SAP ERPのサポートが終了→システム全体の見直しが必要となる

・従来のITサービス市場とデジタル市場の割合が2017年の9:1から6:4になる

・基幹系システムを21年以上使用している企業が6割になる


これらの問題が発生するタイミングである2025年に向けて、DXを進めていくことは必至といえるでしょう。 それを実現できない企業は以下のような事態が発生すると想定されています。


①市場の変化に合わせて柔軟かつ迅速にヒジネスモデルを変更できず、デジタル競争の敗者になってしまう

②システムの維持管理費か高額化することで技術的負債を抱え、業務基盤そのものの維持・継承が困難になる

③保守運用の担い手が不足することで、サイバーセキュリティや事故・災害によるシステムトラブルやデータ滅失などのリスクが高まる


その結果として、2025年から2030年の間に毎年最大12兆円の経済損失が発生すると指摘されているのです。
出典:DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~/経済産業省

 


③生産性や業務効率を向上させるため

既に人口減少期に突入している日本では、今後ますます働き手の確保に労力を要することが予想されます。労働力が減少する中で企業が成長を遂げるには、生産性・業務効率の向上に取り組むことが必至となるでしょう。 また生産性の向上は社員の働き方改革にもつながります。労働時間の是正がなされることで、社員の多様な働き方の実現も可能となるでしょう。社員の幸福度を向上させることは、優秀な人材確保においても重要なことです。つまりDX推進への取組は、人材確保の観点からも欠かせない課題だといえるでしょう。

 


④ユーザーの行動変化に対応するため

ユーザーの需要は時代の流れと共に刻一刻と変化しています。企業が長く生き残るためには、時代の流れの変化やユーザーの需要の変化にいち早く気付き対応していくことが求められるでしょう。 たとえば2020年以降のコロナ禍では、巣ごもり需要からオンラインショッピングの利用者が爆発的に増加しました。コロナ禍をきっかけに、新たにEC事業への参入を決定した企業も多く見られ、結果として新たな収益源の柱となる例もあったでしょう。 しかし大きな時代の変化に対応するためには既存システムでは限界もあり、ビジネスモデルの変革にはITシステムの変革もセットで検討する必要があるといえます。

 

 

⑤変化し続ける市場の中でも優位性を維持するため

ユーザーの需要の変化に伴い、市場での優位性も常に変動が起こっています。現在は優位性を保っている商品でも、市場の変化についていかなければ淘汰されていく将来が待ち受けているでしょう。そのため企業では自社商品のブラッシュアップが常に求められています。DXの推進は、そうした市場の変化に柔軟に対応していくために欠かせない要素です。 求められるものが変化し続けていく社会で生き残っていくには、既存システムからの脱却が急務といえるのではないでしょうか。

 

 

 


日本企業によるDXの取り組み状況

経済産業省によるDXレポートを受けて、日本国内でもDXへの取り組みが始められています。ここで一般社団法人日本能率協会が2020年7月~8月に調査した「日本企業の経営課題 2020 DX(デジタル・トランスフォーメーション)の取り組み状況」の結果から、国内企業の取組状況について見ていきましょう。

 


5割超の企業がDXに取り組んでいる

出典:『日本企業の経営課題 2020』 調査結果/一般社団法人日本能率協会


DXへの取り組み状況への質問に対し、「すでに取り組みを始めている」と答えた企業が全体の28.9%、「取り組みを始めるべく、検討を進めている」と答えた企業が全体の28.4%となっています。つまり、すでにDX推進を実行・検討に着手している企業が全体の57.3%にのぼり、半数を超えていることとなります。
大企業(従業員数が3,000人以上)ではさらにその割合は大きくなっており、すでに取り組みを始めている企業が半数を超える51.1%、検討を進めている企業が32.1%、合計で8割を超える企業がDX推進を実行・検討に着手している結果となりました。
さらに注目すべきは中堅企業(従業員数が300人以上3,000人未満)の回答結果でしょう。すでに取り組みを始めている企業が24.8%、検討を進めている企業が31.2%、合計で半数を超える結果となっており、大企業だけではなく中堅企業もすでにDXに高い関心を抱いていることが分かります。

 


DXを推進する目的とは

出典:『日本企業の経営課題 2020』 調査結果/一般社団法人日本能率協会


本調査では、DX推進の目的についても調査を行っています。大企業だけでなく、中堅企業や中小企業もDXに取り組む背景にはどのような理由があるのでしょうか。
回答結果は「デジタル技術の活用による業務プロセスの効率化・生産性向上」「デジタル技術の活用による既存の商品・サービス・事業の付加価値向上」の2つを選んだ企業が多くなっています。
「デジタル技術の活用による業務プロセスの効率化・生産性向上」を「非常に重視している」と答えた企業が34.8%、「重視している」と答えた企業が46.9%、合計で81.7%となり、最も重視されている目的であることが分かりました。
2番目に多かった目的は「デジタル技術の活用による既存の商品・サービス・事業の付加価値向上」となっており、「非常に重視している」、「重視している」と答えた企業の合計が72.7%にのぼっています。
これらの結果から、企業はDXを推進する理由として、「生産性の向上」や「競争力の向上」に重点を置いていることが分かるでしょう。 2025年の崖でも指摘されていた通り、DXを実現できない企業はデジタル敗者となるだけでなく、生産性の低下や競争力の低下によって経済的損失を被るという認識が既に広く浸透しているということです。
これらの結果から、企業はDXを推進する理由として、「生産性の向上」や「競争力の向上」に重点を置いていることが分かるでしょう。 2025年の崖でも指摘されていた通り、DXを実現できない企業はデジタル敗者となるだけでなく、生産性の低下や競争力の低下によって経済的損失を被るという認識が既に広く浸透しているということです。

 

 

DX推進における課題

出典:『日本企業の経営課題 2020』 調査結果/一般社団法人日本能率協会


DX推進において企業が抱える問題ついても確認しておきましょう。
ここでは「DX 推進に関わる人材が不足している」、「DX に対するビジョンや経営戦略、ロードマップが明確に描けていない」、「具体的な事業への展開が進まない」の3つを選択した企業が多い結果となりました。
本調査では、「DX 推進に関わる人材が不足している」について、「おおいに課題である」、「課題である」、「やや課題である」と答えた企業の合計が8割超にのぼっており、最も多い結果となりました。 ここでも2025年の崖で指摘されていた「IT人材の不足」が顕著に表れていることが分かります。DXレポートでは、IT人材が不足している中で既存システムの保守・運用に貴重なIT人材が割かれていることについても指摘しているように、IT人材の確保・有効活用についてはDXを進めていく上で重要な点となるでしょう。
また「DX に対するビジョンや経営戦略、ロードマップが明確に描けていない」、「具体的な事業への展開が進まない」と答えた企業もそれぞれ7割を超えています。 DX推進の必要性や既存システムが抱える問題を認識していても、DXを進める中長期的なビジョンが見えないと感じている経営者が多いようです。 DXを単なるデジタル化に終わらせないためにも、経営戦略の中で具体的にDX推進の方向性を定める必要があるといえます。

 

 

 


 DXによる社会の変革期が到来している

IT技術によって私たちの生活は大きく進化してきました。

IT革命といわれた1995年から既に25年以上が経ち、現在はDXという大きな波によって新たな変革期を迎えています。 経済産業省が指摘する2025年の崖では、複雑化・ブラックボックス化した既存システムに依存してDXを成功できない企業はデジタル敗者となるだけでなく、大きな経済損失を被るといわれています。

これは決して大企業だけの問題でなく、日本企業全体が直面する問題です。 既に多くの企業がDX推進の実行・検討に着手していることからも分かるように、DX推進へ取り組むことは、企業がこの先の社会で生き残っていく上で避けられないものといえるでしょう。 貴社もこのDXが起こす大きな時代の変化に遅れずについていくことで、生産性の向上やコスト削減、新しいビジネスモデルの確立が可能となります。2025年の崖問題に直面する前に、自社ではどのような取り組みができるか是非検討してみてはいかがでしょうか。

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